魚野川が蛇行し,両岸に山が迫っているところで,ここに国道17号,関越自動車道,JR上越線,上越新幹線がこの狭い地域を横断している交通の要害である。関越道以外は魚野川の横断とトンネルで立体交差している。
この地区は本震(M6.8)の震源地から至近の距離である。
斜面崩壊について
国道17号和南津トンネル上の斜面が魚野川方向に大規模な崩壊を生じた。
和南津トンネルの魚野川対岸(右岸側)の法面が大規模な崩壊。ただしその下を通っている県道はスノーシェッド(ロックシェッド?)が設置されており,崩壊土砂はシェッドの屋根上に堆積していた。元々崩壊箇所だったと思われる。なお,一部に施されている法枠工も滑っている形跡が見られる。
国道17号和南津トンネルの上部の段丘面に新幹線のトンネル横から上る町道の一部が崩落し,トラックが横転していた。
東京寄りの堀之内トンネル坑口付近の地山の陥没,すべりが見られる。明かり巻横の農地が線路と平行な方向に滑動しているので,トンネルや高架橋部には特に影響は与えていないが,横にある変電設備の擁壁やフェンスに大きな損傷が見られた。トンネル脇の高圧線鉄塔は基礎が深いためか特に移動や損傷は見られない。
堀之内トンネルから魚野川までの区間のラーメン高架橋に損傷が多く見られる。特に橋脚のせん断破壊がトンネル坑口付近と魚野川橋梁寄りの両端の区間で顕著である。国道17号と交差する中間付近ではあまり損傷は見られない。
川口町市街地の東側にある高台に各種スポーツ・レクリエーション施設が整備されているが,この場所は本震の震源に非常に近い位置にあり,激震に見舞われた場所と考えられる。
中の施設の被害状況を見ると,地盤条件によって大きく被害の程度が異なるように思われる。中央の多目的広場では,切土部分にほとんど変状が見られないのに対して,盛土部分に亀裂が入っている。また切土部に建てられた管理事務所にもほとんど損傷が見られない。
一方管理棟から道路をはさんだすぐ近くにあり,谷筋の盛土部に建っている体育館は構造躯体が数十センチ沈下していた。但し体育館の床部分は,接地圧が小さかったためと思われるが沈下せず,構造躯体と縁が切れて段差を生じていた。
また体育館の周囲は揺れの激しさを物語る証拠がいくつか見つかっている。
まず,体育館の脇に設置してあったコンクリート製のゴミ箱が1メートルほど飛ばされている。人力ではとても動くようなものではなかったので震動によって移動したものと思われる。また,近くの芝生に埋め込まれていた大きな庭石が飛び出している。これらのことは,周辺では重力を越える縦方向の加速度が生じた可能性を示すものと思われる。
さらにその上部に野球場の照明支柱も完全に転倒し路面の損傷も激しい。
この公園の北西,越後川口駅の裏手の山腹には大きく崩壊した跡が見られる。
この地震によって住宅等に最も大きな被害を受けた被災地の一つである。
信濃川を横断するJR飯山線の橋脚に損傷が見られる。堤外地の橋脚には石張りが施されているが,中央より少し下の部分で石が大きく損傷している箇所がいくつかある。また,堤内地右岸側の橋脚は,やはり中央より少し下で完全に横ずれをしていた。かなり古い構造物のようであるが,コンクリートの剥離面に鉄筋が見られず,ダルマ落としのように綺麗にスライドしているので無筋構造物の可能性がある。ずれの方向は橋軸と直交し,上のブロックが北西方向に20〜30cmほど移動していた。桁などの移動は不明である。
この鉄道橋のすぐ下流にある県道橋の橋脚には特に損傷は見られない。但し歩道と車道の床版の継ぎ目に若干の隙間が空いており,橋軸と直交方向の強い揺れがあったことを示唆している。
住宅等の被害については割愛する。