新潟県中越沖地震 災害調査速報

刈羽村刈羽地区の状況    2007年7月17日 調査 ・・・・ 新潟大学工学部 保坂吉則
鯖石川河口から北東に連なる荒浜砂丘の麓とJR越後線刈羽駅とにはさまれた地域は,3年前の中越地震において液状化による大きな被害を受けた地域である.住宅等の傾斜・沈下や下水道管渠に被害があった.このときの被害を念頭に今回の地震の被害調査を実施した.なお,柏崎刈羽原子力発電所は,この地域のちょうど反対側の砂丘斜面に立地している.
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JR越後線刈羽駅近くの更地の宅地
液状化によって汚水枡が浮き上がっており,工事用の配電盤柱が傾斜.
中越地震の復旧によって,この周辺で新たなマンホールや埋め戻し土の沈下は見られなかったが,最近汚水枡を取り付けるために掘削したと思われる部分が少し陥没していた.
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舗装版が圧縮力を受けて損壊.排水枡脇からは噴砂が確認された.
道路は写真奥に向かって緩やかな登り坂になっており,斜面下方に数十センチ側方流動した可能性がある.このような舗装版の損壊は周辺各所で見られた.
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砂丘斜面下の宅地被害の様子.
宅地内にあった水平なコンクリート版が,破損して斜路の舗装の上に乗り上げている.住宅全体が水平に移動したものと考えられる.
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コンクリート版破損部の様子.
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県道刈羽停車場線脇の倒壊家屋
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上に示した倒壊家屋の奥にある車庫脇の噴砂.
住民からのヒアリングでは,中越地震の3倍くらい噴いたとのことである.地震の揺れも,そのときよりはるかに強かったそうである.
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斜面下の状況
斜面と平行に逆断層的な亀裂が見られる.大きなすべりブロックの末端なのかその中の小さなすべりによる亀裂なのかはこれだけでは不明.
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砂丘斜面中腹の竹林の中にある小さな滑落崖.小さなすべりブロックの一部と思われる.
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住宅裏の砂丘斜面は急傾斜の竹林となっていて,竹林の上は少し緩やかになって畑がある.竹林と畑の境界部に大きな滑落崖が生じたようであり,調査時点ではこのようにブルーシートが処置されていた.この施工範囲を見るとすべりは相当長い距離にわたって生じたことが伺える.

なお前回の地震では,畑の中に小さな亀裂が生じただけで斜面のすべりまでには至らなかったとのことである.
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住宅側部の亀裂.写真奥が砂丘の斜面.亀裂の様子からは基礎ごと少し上方に持ち上げられているように見える.斜面に近い奥のほうが段差が大きいことから,すべりの先端は住宅下部に及んだ可能性が高いかもしれない.
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上記の被災住宅より少し東寄りの住宅
こちらは砂丘の下部が大きく隆起しており,すべり土塊が住宅を下から押し上げている様子がわかる.
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被災住宅裏の斜面中間にある小さな滑落崖.このような亀裂が斜面と平行に何筋も確認できたが,深い藪のため最上部の滑落崖は今回は確認できなかった.前述のブルーシートがかかっていた斜面より緩やかであり,すべり土塊はかなり大きい可能性がある.
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被災住宅を東側から撮影したもの.写真左手が砂丘斜面.隆起の状況と住宅の傾斜の大きさが伺える.

最初に出てきた舗装版の破壊も,裏の斜面が住宅を押したことで生じた可能性も考えられる.なお,このような砂丘の麓にある住宅のほとんどは,この住宅も含めて3年前の中越地震で被災して建て替えられた新しいものが多く,なんとも痛ましい.
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刈羽駅に近い畑の中から湧水が見られた.地下水位の高さが伺える.
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前述の畑同様,駅前のマンホールからも清水が湧き出ていた.このほか,個人住宅の汚水枡からも湧水が確認できており,被圧した地下水が,下水道管の破損部などから流入しているのではないかと思われる.なお,調査当時は水道は完全に止めれらていたので上水道の漏れではない.

ただ,普段の地下水面は地表面より下ではないかと思われるので,地震によって発生した過剰間隙水圧がまだ完全に消散していない可能性が考えられる.(撮影は本震から約28時間後.)