この問題を解く鍵は,透水タンク内の鉛直流れにおける(みかけの)流速は層の種類によらず一定値 v を取るということである.丁度電池を直列つないだのと同じことで,この場合電流が一定となる.そして電圧に相当するのが水頭損失(水頭差)である.
さて2層にわたる全水頭損失は,図から明らかなように h = 50 cm である.一方各層毎の水頭損失は不明であるので,これを未知数(h1 ,h2)とおいて連立方程式を立ててみればよい.
まず,水頭損失に関する関係は下式となる.
次に,流速が一定であるという条件を満足する方程式は下式となる.
これを解くと,h1 = 11.54 cm,h2 = 38.46 cm を得る.
したがって,流速は,
となる.また,各層の動水勾配は,
となる.
演習の解答を見ていると,各層の水頭損失を50 cm とし,流速を別々に求めている例が多いようだ.これは電池で言う並列問題に相当し,透水では鉛直流れではなく水平流れの問題を考えるときはこのように考える.
解答が出たところで,今一度考えてほしい.
層が薄い下層の方が,水頭損失が大きいということである.このことは,水頭損失が層厚に比例し,透水係数に反比例することを考えれば理解できるだろう.したがって,層厚が上層の3分の2であっても,透水係数が5分の1であることから下層の方が3倍近い水頭損失となったのである.
もし,ほんのわずかな厚さであっても,透水係数が非常に小さい粘土層が存在していると,そこでの水頭損失がかなり大きくなることが予想される.