2002/11/11 出題分

各点の全水頭を,添字を付けてそれぞれha ,hb ,・・・ ,hgとおく。
A点では圧力水頭が無いので,ha = za = 20+30+30+20 = 100 cm となる。
したがって,hb = ha = 100 cm

B点はA点より位置水頭が20cm小さく,圧力水頭が20cm大きいので結局全水頭は等しくなる。
要は,静水中ではどの場所をとっても全水頭は同じである。
Bernoulli(ベルヌイ)の定理の意味をしっかりと理解しておいてほしい。
同様にしてD点の全水頭を求めると,
hd = he = hf = hg = 20+20 = 40 cm
となる。

さて問題はC点の全水頭 hcである。
BC間(L1)の水頭損失を,Δh1 = hb - hc ,
CD間(L2)の水頭損失を,Δh2 = hc - hd とおくとまず下式の関係が成り立つ。
Δh1+Δh1 = hb - hd = 100 -40 = 60 cm ・・・・ (1)

つづいてもう一つの境界条件を考える。
この透水タンクモデルでは流線方向に断面が変化しないので,地盤中のどの点をとっても見掛けの流速は一定となる。
したがってDarcy則より下式が成り立つ。
v =k1Δh1/L1 = k2Δh2/L2 ・・・・ (2)

解答を見ていると各層毎に別々の流速を求めている場合があり,意外とこの条件に気づかない学生が多い。
物理現象をきちんと捉えることは理解の第1歩である。

式(1),式(2)の連立方程式を下のように解くと,それぞれの水頭損失が求まり,これよりC点の全水頭が計算できる。
v =k1Δh1/L1 = k2Δh2/L2
Δh1=60/((k1/k2)(L2/L1)+1)
hc=hb-Δh1

上で求めた水頭損失を式(2)に代入して流速を求めると下式となる。
v=k(Δh/L)

なお,平均透水係数をダイレクトに求めて流量と水頭損失を計算する方法を末尾に掲げておいたので参考にしていただきたい。

さて,全水頭分布をまとめると
A-B間:100 cm,C点:98.5 cm,D-G間:40cm となった。


これをグラフで表示し,位置水頭と圧力水頭の分布も併せて下図に示す。
図から地盤中を水が流れるメカニズムを理解し,土質の違いによる影響を考えてほしい。
砂層とシルト層では透水係数が大きく異なるため,全水頭損失のほとんどは透水係数の小さなシルト層で生じていることがわかる。
この水頭損失は地盤・土粒子に対してどのように作用しているのだろうか。
結論から言うと,次の章で学ぶ有効応力の増分となっているのである。その大きさは透水力 w と等しい。

水頭分布

さて,一般的に水の流れに関して次の2つのことが言えるのだが・・・
(i)水は標高の高いところから低いところへ向かって流れる。
(ii)水は圧力の高いところから低いところへ向かって流れる。
両方とも真実であるが,(i)では圧力が一定であること,(ii)では高さが一定であることが条件となる。結局のところこの2つのことがらは
全水頭,すなわちポテンシャルエネルギーが高いところから低いところへ流れるということに集約されるのである。

ところで,もしG点の出口に蓋をして流れを止めてしまったら水頭分布はどうなるであろうか?


別解:多層地盤の鉛直透水における平均透水係数を求める方法

本質的には上記の連立方程式を立てて解く方法と同じなのだが,平均透水係数の算出式が既知として流速を求めてみる。
v=k(Δh/L)

また各層毎のDarcy式から水頭損失を求めると,
hc=hb-Δh1


戻る