2004/12/20 出題分

(1)地盤の内部摩擦角(せん断抵抗角)φ'=30°より、
Rankineの土圧理論によって主働土圧係数を求める。

式
地盤が地下水面下にあるときは、水平土圧は鉛直有効応力に対応しているので、
土の単位体積重量を水中重量で置き換えることで計算し、
全土圧(奥行き1m当り)は下式のとおりとなる。
式
また、水圧は水の単位体積重量に置き換えれば良いが、
当然のことながら、流体ではある点作用する圧力に方向性がないから
K=1ということになり、これより全水圧をを計算すると下式となる。
式


<補足1> 上の全土圧を求める計算式は、 変形しない剛な壁体に作用する土圧は深さに比例して増加するという仮定に基づいている。 したがって、底面の鉛直有効応力を求めてこれに土圧係数を乗じて求めた水平有効応力

式
と、壁の深さから簡単な三角形の面積計算で全土圧が計算できる。
式
さて、以上の結果より壁に作用する土圧と水圧を図示すると以下のとおりとなる。 水面下にあるときは、水圧が土圧に比べて非常に大きいことが理解できる。 しかしこの事例では水位が壁の左右で同じなので、水圧は相殺し合い、壁に作用する荷重は土圧のみとなっている。
式


(2)池の水位が急に低下したとしても、地盤内ではその透水性によって水位低下が 遅れるため、水圧が作用したままとなる。したがって、一時的に壁には右側 からのみ土圧と水圧の両方が作用することになり、コンクリート壁の重量や厚さによっては転倒や水平移動が生ずる可能性が考えられる。
この状態を下図に示す。

式


<補足2>
今回は、下図のように水圧が地盤内には作用しておらず、池に 面した部分だけに作用しているように考えていると思われる答案が多くみられ た。しかも、水圧によって壁が右側に傾き、池の水位が下がって水圧の合力が 土敦合力を下回ると左側に転倒するとした解答も多かった。が、これは間違い。

式

しかし厳密には下図のように壁面に作用する圧力のほかに、壁体の重量Wと 底面の摩擦抵抗Sが作用しており、これらの荷重全体の釣合条件によって安定・不 安定を論じなければならない。
式

<補足3>
なお、地盤内の水位も低下した場合は水圧がなくなるので少し安全となる。ただし、全土圧は下式のように全応力で計算するので、水面下にあったときと比べて2倍近い大きさになる。 (単位体積重量は飽和時より少し小さめで試算している。)

式
式


<余話>
盛土を行なって宅地を造成したり道路を建設するとき、その側面の土を押さえるために壁を設けることがよくある。これを擁壁(ようへき)という。もし集中豪雨などで宅地内の水位が上昇した場合、上の計算結果からわかるように擁壁に大きな水圧が作用して崩壊を起こすことがある。したがって、擁壁を作るときは、側面に水を抜くような手段を講ずることを忘れてはならない。

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