2007/1/15 出題分

まず,A点の深度における鉛直全応力,間隙水圧,鉛直有効応力を求める.

次に,Coulombの土圧理論によって主働土圧係数を計算する.題意よりφ=30°,δ=15°,また,壁面は鉛直なので,ω=90°,地盤面は水平なのでβ=0°とおいて,

が得られる.これを鉛直有効応力に乗じて水平有効応力を求める.

水圧は,静水状態を考慮すると水平方向と鉛直方向の圧力が等しいことから,壁面に作用する水圧も,uw=29.4 kN/m2となる.
<補足1>
土圧係数を全応力に乗ずる間違い
土圧係数は有効応力に対して乗ずる必要がある.すなわち,

となる.水を含む流体は,静止状態では全方向に対して同じ圧力を発揮するから,いわば土圧係数に相当する側圧係数は常に1となるため,土骨格と間隙水を別々に計算する必要があるためである.ただし地下水がない場合は有効応力は全応力と等しいので問題は生じない.
なお,今回の例題で水平全応力を求めてみる.

もし全応力に土圧係数を乗ずると32.4kN/m2となり,本来の主働圧力を過小評価してしまう.地下構造物では,土圧の算定が重要であるが,実は水圧が大変重要な作用を及ぼすのである.
<補足2>
Coulomb土圧の特長のひとつは,粗さ角すなわち壁面と土の摩擦角を考慮できるということである.もし摩擦が無い場合は土圧係数はどうなるのであろうか.題意の条件で,δ=0°とおいて計算してみる.

このように,δ=15°と仮定した場合に比べて若干大きな値となった.受働土圧の場合は主働土圧とは反対に粗さ角が大きいほど土圧係数が大きな値をとる.各自計算して確かめてほしい.なお,鉛直壁,水平地盤という条件のため,Rankine理論が適用できるので,これで計算した土圧係数は,

となる.この値は粗さ角無しで計算したCoulomb理論の土圧係数と等しいのである.
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