さて,湿潤質量をmd,乾燥質量をmtとおいて単位体積重量を求めてみると下式のようになる。
(1)湿潤単位体積重量の計算
(2)乾燥単位体積重量の計算
ここで,単位体積重量γと密度ρの関係について解説する。
ρは単位体積当りの質量 m であり,γは単位体積当りの重量 W である。質量と重量の区別を明確にしなければならない。重量とは力なのである。
重力単位系では 1 kg の質量をもつ物質の重量を1 kgf (キログラムフォース) と定義していて,これをごっちゃに使っていても計算結果には問題は起らない。一方SI単位ではW=m g なる関係より,9.8N (ニュートン) という重量で表記されるため,数値そのものが10倍違う。混同したら大変なことになる。
さらにもう一つ関門がある。ここでは与えられた質量は g (グラム) であり,寸法は cm である。ニュートンという力の単位では,MKSの単位に直す必要がある。そこでまず密度の換算を次のように行う。
ρ = 1 g/cm3 = 1 t/m3 = 103 kg/m3
よって単位体積重量は,
γ = ρg =103 (kg/m3) ×9.8(m/s2)=9.8×103 (N/m3) = 9.8 (kN/m3) となる。
ようするに,密度 1 g/cm3の,地球上における単位体積重量は9.8 kN/m3 というように覚えておけば良い。
(3)含水比の計算
(4)間隙比の計算
(5)飽和度の計算
なお,土粒子と水の重量をそれぞれ求めて,SIで表示すると下記のとおりとなる。
さて,この土が粘土なのか? 砂なのか?どちらであろうか。
土質種別を判定する方法はいくつかのプロセスがあるが,最終的には粒度やコンシステンシー限界で判断することになる。しかしここでは計算で求められたデータから推定しなくてはならない。そこでどのデータ・パラメータで考えるかが問題になる。
演習の解答を見ると,多くの学生は土粒子密度(比重)で判断しているようだが,2.68という数値から土質を断定するのはかなり困難である。確に粘土鉱物は比重が大きいものが多いが,"粘土"と分類される土はそういった鉱物だけでなく,有機物やシルト,砂粒子も合わせて含有していることが多く,その結果2.6以下になることもある。
また砂がすべて石英分というわけではなく,さまざまな比重の鉱物も含むのが普通である。詳しくは理科年表や鉱物辞典等で調べてほしい。
では,なにを根拠に考えるか。
ここで一番よりどころになるパラメータは間隙比である。一般的に粘土に比べて砂は間隙比が小さく,緩い状態でも1以下の場合が多い。一方粘土は活性度の高い粒子が構造をつくるため間隙比が大きくなる。
教科書(石原:土質力学第2版)のP26図2-23を見ると,1.35という間隙比はもっとも緩い状態の最大間隙比では砂と粘土の境界であることがわかるが,もっとも密である最小間隙比からみたら粘土の範囲となっている。
したがって,かなり砂分が多いと思われるが,総合的に判断して粘土の可能性が高いと考えるのが妥当であろう。
ただし,ゆるい砂の可能性も十分ある。かなり曖昧と感じたかもしれないが,実際にはすべて明快に砂と粘土が区別されるわけではなく,その中間的な土も非常に多いのである。いずれにしてもこの判断は,ほんの一面的な見方に過ぎないことを注意しなければならない。あくまでも「推定」である。
なお,含水比も参考になることがあるが,乾燥していたり不飽和の場合はもちろん判断材料にできない。飽和していれば間隙比とほぼ等価なパラメータとなる。
おまけ → しかし重要 ■ 今回の出題内容は,地盤工学の基礎の基礎である。それぞれの概念をしっかり理解して覚えておくことが,今後学習を進めていくうえで大切である。
■ 数値の扱いについては,有効数字に留意すること。
※桁落ちの例:246.35-238.29=8.06 では5桁の量が3桁となる。
■ 単位は必ず書くこと。
|