解法の流れとしては,まず地下水位の低下前後における鉛直有効応力を求め,その増分Δpを得る。
続いてe-log p 関係からCcを用いて圧密による間隙比の減少分Δeを求める。
これと初期間隙比から圧縮ひずみ量が得られる。
以下に計算の流れを示す。
地下水位がA点にあるとき,およびB点にあるときの鉛直有効応力は下式から求まる。
したがって地下水位低下による有効応力の増分は次の通りとなる。
下図の e-log p の線形な関係から,間隙比増分 Δe は下式のように求められる。
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よって,地下水位がB点まで低下し圧密が完了したときの間隙比 eCB は,
となる。また鉛直ひずみは初期間隙比を用いて,
となる。
Note 1
圧密は有効応力の増加によって生ずる
残念なことに,有効応力ではなく全応力の変動に基づいて沈下ひずみの計算を行っている解答が多かった。
この演習問題では,全応力は地下水位低下に伴い若干減少するので,
もしこれに基づいて計算してしまうと,沈下ではなくて膨張が生ずることになる。実現象と逆である。
Terzaghi は,有効応力の原理の第2項で次のように述べている。
All measurable effects of a change of stress, such as compression, distortion and a change of shearing resistance, are exclusively due to changes in the effective stesses.各自でこの英文の意味を読みとってほしいが,要するに,有効応力が変化しなければ土はびくともしないということである。
専門書の圧密理論の記述において,有効応力であることを示す ' を付けないことが多いが,
これは有効応力で考えることが当然のものとしてあえて付さないのかもしれない。
この後学ぶせん断理論なども含めて,対象が有効応力で議論されているのか,それとも全応力を前提としているのか,
初学者は特に注意し,考えながら読み進めていってほしい。
Note 2
体積圧縮係数の扱い方には注意が必要である
圧縮指数Ccを用いて間隙比の減少量を計算する代わりに,
体積圧縮係数mv を求めて,それに有効応力増分を掛けることで直接鉛直ひずみを計算する方法もある。
しかしここで問題が生ずる。
多くの学生はmv を初期条件(p0 , ε0)より求めているが,ε-p 関係は非線型であり,
mvはあくまでもその点での接線であるため,
(p0 , ε0)を基準とした計算では下図のように本来の鉛直ひずみ量より大きく見積もってしまう。
有効応力の増加が大きいほど誤差は大きくなる。
これに対してe-log p 関係はほぼ線形と仮定して良いので,
Ccから求める方法はそのような誤差は生じにくい。
では,mv を用いた最終沈下量の計算,S0=mvΔpH も同様に沈下量を大きく見積もってしまう恐れが
あるのではないかという疑問が出てくる。それを避けるため,ここでは初期条件でのmv ではなく,
鉛直有効応力がpからp+Δpの間の平均的なmv を圧密試験のデータから読み取って用いることで近似値を得るものと考えてほしい。
また,有効応力増分Δpが小さければ誤差は小さくなるので,
小さな荷重ステップごとに分割して計算し総和をとる方法もある。
しかし実務で用いられている,たとえば「道路橋示方書」や「建築基礎構造設計指針」では,
圧縮指数 Cc による沈下量計算(正規圧密粘土の場合)が用いられている。
補筆
この事例では2%近いひずみ量となった。
実際に地下水位低下による圧密沈下(地盤沈下)は大きな社会問題となってきた。
さて,マスコミ的にはしばしば地盤中の水を汲み上げたためその分の沈下が起ったと説明されることがあるが,それでは十分ではない。工学的にはこの演習で学んだように,地下水位低下によって有効応力が増加したため圧密沈下が生じたという言い方が正確であろう。 なお,圧密沈下の原因は地下水位低下だけではない。地表面に建築物を建てたり,道路や堤防などの盛土を行うことによって地盤内の有効応力が増加して圧密が生ずる。私たち建設技術者にとってはこちらの方が一般的な問題である。
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