まずA点に作用する鉛直有効応力を求める。
(ただし地下水位はないので全応力に等しい。)
水平応力(水平土圧)は,鉛直有効応力に土圧係数(静止,主働,受働)を乗じたものになるので,それぞれ以下の通りとなる。
静止土圧:
主働土圧:
Rankineの主働土圧係数を求めると次式となる。
受働土圧:
Rankineの受働土圧係数を求めると次式となる。
以上,静止状態,主働状態,受働状態をモール円で表すと下図のようになる。
図からわかるように,3つの応力状態はいずれも鉛直有効応力の点はすべて同じなのでここを通る円となる。
主働,静止土圧係数は1より小さいので,水平応力は最小主応力,鉛直応力が最大主応力となる。
一方受働土圧係数は1より大きいので,水平応力が最大主応力,鉛直応力が最小主応力となる。
Rankineの理論では,主応力面が明快なのでモール円を作るのは容易である。
補足事項
今回の設問では地下水面は深いところにあって考慮しないで考えることができた。しかし,実際の擁壁に作用する土圧を考えるときは,地下水の影響がとても大きいのである。実務上でこのことをちゃんと理解しておかないととんでもない事故を引き起こすことがあるので注意してほしい。
土圧係数は基本的に有効応力に乗ずる。
水圧を別途考えるが,流体であるから水圧は当然鉛直方向と水平方向の応力は等しい。
土圧係数的に表現すれば,K = 1ということ。
一般的に静止状態,および主働状態の場合は,土に対して水による水平方向の圧力がとても大きくなってくるのである。
地下水を考えない条件で設計すると,地下水位が上がることによって水平全応力が増して擁壁が移動したり転倒したりすることがある。
一方,受働状態では土圧に比べて水圧が小さくなる。受働土圧は壁から地盤に力が作用するとき,その抵抗力(支持力)として考える。
したがって水位上昇によって水平抵抗力が減少すると,地盤が破壊してしまうことがある。