上層における水頭損失をh1、下層の水頭損失をh1とおいて方程式をたてる。
まず、上層がボイリングする条件のとき下式が成り立つ。したがって上層の水頭損失は、 となる。
ところで、透水管は断面積が変化しないので、透水速度は上層、下層ともに等しくなければならない。
(演習では上下が異なる速度とした間違いが非常に多く見られた)
ダルシーの法則の基づいて、上記条件を式に表すと、の関係が得られる。したがって、下層の水頭損失は、 となる。多層地盤の水頭損失は、各層の水頭損失の和になるので、 が得られる。
補足1
ところで、この時下層はボイリングを起こさないのか検証してみる。
今回は下層と上層の水中単位体積重量が等しいので、限界動水勾配は同じになる。
下層の水頭損失10cmより動水勾配を求めるて比較すると、の関係が得られ、ボイリングは生じないことがわかる。
補足2
また、もし上層と下層の透水係数が等しい場合はどのようになるか試算してみよう。このように、全層が均一である場合、上層の透水係数が小さな場合より大きなな水位差まで大丈夫であることがわかる。層厚が等しければ、透水係数に反比例して水頭差を分担するため、透水係数が小さい層で先に限界状態に達するためである。
なお、透水係数の小さな層が演習の例とは逆に下にある場合、その層が限界になってもその上にある透水係数の大きな層がまだボイリングに達しない。このとき層境界で有効応力が残る状態となり、下層に押さえ応力として作用するので全体としてはボイリングを生じない。
したがって、ボイリングの恐れがある層の上に、透水性の非常に高い砂利・砕石などを置いておくとボイリング防止に効果がある。